グリッドに対して千鳥足な、よたよたと転がるメロディは人間ボーカルであればそう不自然にとられないのだけれど、ボーカロイドの場合は人間と違ってわざとやらないと千鳥足になれないもんだから、わざとらしさというかちょっと濃い味の、特有の不思議さ・あやうさ・飾らなさ(飾らなさを飾っている、んだけれど。)が出てくる。
そんないわゆる「VOCALOIDよれよれ曲」的おもしろさを、徹底的にキャッチーなサビと接続することでより深く表現する作品。よたって転がるメロディのABメロでは歌詞もどこか思考を垂れ流すまま、自分でも整理しきれていない、言葉にもならない単語の吐露で、相手のことなんて気にしていない。自分だけの世界での思考をうたう。それに対し、カチッとキマッたキャッチーなサビでは心を押し込め、相手に伝えるべき綺麗な言葉をうたう。
人間、自分の内側にあるものと出力するものは違うもので、その差に落ち込んだりすることもあるのだけれど、ちゃんとどちらも素敵と思うし、差があるからこそ見える素敵さもある。この曲もそういうかんじ。