レビュー詳細

過去作「例夏」の茹だるような暑さを感じる音色とは打って変わって、柔らかいシンセ音に伸びやかな歌声とまさに春を感じられるのが本作です。
今回最も印象強いのは曲展開です。クローズリムから始まる穏やかな立ち上がりからBメロでは3拍-3拍-2拍のリズム取り、1サビ後の間奏ではハイハットで6つを軸としたフレーズがあり、3や6という外したリズムを意識させています。そこから2番に入るときにはガラッとリズムを変えてキャッチーな展開に。このように変拍子などの派手な切り返しは使われておらずとも、微細な変化をもたせた展開によって、パートが変わるごとに楽しませてくれます。
また、この曲は1番2番のサビよりもラスサビの方が早く終わるという、かない珍しい曲構成です。1番と2番では春の陽気で時の進みがゆっくりになったように思わせる空気が表れています。対してラスサビが短いのは春という"別れの季節"、そして歌詞から窺えるどうしようもない寂しさから来ているように思えます。1サビ2サビと聴いているとラスサビはそれと同じくらいの長さ、あるいはそれより長く続くと予想しますが、それを裏切ってあまりにもあっけなくこの曲はアウトロへと移ってしまいます。聴いている我々を置いていくかのように。ここに諸行無常の切なさや無力さといったものを感じませんか?

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