話しかけてくるようなAメロとBメロの歌詞や、幻視的なまでにカラフルなMV、わかりやすい構成ながら最先端のリズムといった、奇抜で高度な楽曲の側面を持ちながらも、敢えてキャッチーさを前面に出した楽曲。
特にリズムについては、4拍目に2回音をねじ込んで作るJersey Clubというジャンルに特徴的なリズムを要所要所で採用している。これは『Bling‐Bang-Bang-Born』でも使用されて大流行しており、作曲者の芝さんの流行感度には平伏するしかない(もちろんBling‐Bang-Bang-Bornがリリースされる前に作られていた可能性もあり、それはそれで先見の明があってヤバい)。
そして今回もTommyさんとミクのデュエットに相応しく、他者とのシナジーをテーマにしている。いや、「人間じゃないねんな」と言っているのでもはや他者でもなくいわば「他存在」と言うべきだ。
楽曲世界観の中で相手を人という枠組みから外したからこそ「見た事ない? ならまだわからないよね」という1Bメロの歌詞が、説得力を持って迫ってくる。そしてここで起こした「実際に見ないと分からない」というニュートラルな提起が「ちょっと未来の いちばん踊りたいとこで 出会うはずさ」とサビでプラスの提起に変化してハッピーな気持ちになれる。聞き手の気持ちの持っていき方の上手さを感じる歌詞は、聴きやすくも心に残る素晴らしい塩梅で、私たちの心を軽くしてくれる。
ちなみにXで投稿したぼかれびゅは、巷で話題をさらっているGPTー4oに「100字くらいで曲のレビュー書いて」という指示とキーワードを与えて書いてもらったものだ。生成AIという「ニューニュー存在」の脅威ばかりが取り沙汰される世の中だが、この曲を聴いていると、案外私たちはGPTー4oとも仲良くなれるのかもしれないと思うのだ。