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#4つ打ち
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2023年08月
Neruさんの言わずと知れた大名曲!パワフルなVOCAROCKの代表格
タイトル
【鏡音リン】 ロストワンの号哭 【オリジナルPV付】
投稿者
Neru
名曲をレビューしてみようのコーナーです。 Neruさんが不動の人気ボカロPとしての地位を確立する大きな契機となった曲。ニコニコでの再生数はなんと現時点(2023/8/1)で920万再生オーバー! そんな不動の有名曲を、ドラムと曲構成の視点で語っていきたいと思います。最も重要なポイントは、全編4つ打ち「ではない」ということ。"4つ打ち"とは、「1小節にバスドラが4分音符で4回鳴らされるリズム」というのが定義になります。もっと簡単に言うと「ドン、ドン、ドン、ドンとバスドラが均等に鳴っているリズム」です。今回の『ロストワンの号哭』だとイントロとサビとアウトロの部分が4つ打ちになるので、参考までに聴いてみてください。 さて、イントロとサビとアウトロで4つ打ちと書きましたが、逆に言えばそれ以外のセクションは4つ打ちではありません。中でも注目してほしいのが、AメロとBメロ。これらのリズムはバスドラ以外は4つ打ちのリズムとして頻出するドラムフレーズとなっており、4つ打ちの体を成していないのはバスドラだけです。Bメロなんかはバスドラ以外がイントロと完全に同一フレーズなので、イントロのドラムを4つ打ちでなくしたリズムという言い方もできます。4つ打ちのリズムである場所と4つ打ちのリズムでない場所が1つの曲に存在する点や、イントロとBメロでは4つ打ちの中核となるバスドラだけが差異となっている点、さらにはベースにおいてダンスビートのリズムで頻出するオクターブ奏法を4つ打ちの場所でのみ使用している点からも、作曲者であるNeruさんは意図的に4つ打ちのリズムとそうでないリズムを使い分けていると考えられます。 「この曲の中には4つ打ちになっているところと4つ打ちになっていないところがある」と言うとひどく当たり前の話をしているようですが、重要なのは4つ打ちになっていないところが「限りなく4つ打ちに寄せられている」ということです。ここからは、厳密には4つ打ちでないが、4つ打ちに見せかけるリズムを使いたかったのだと推察されます。そう考えた上で振り返りますが、4つ打ちになっていないのはAメロとBメロ、4つ打ちになっているのはイントロとサビでしたね?この曲の1番の構成はイントロ→Aメロ→イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ。つまり、非4つ打ちのセクションが4つ打ちのセクションに挟まれている形になります。おそらくNeruさんは、途中でドラムの進行に明確な差異を出したかったが、4つ打ちのノリはできるだけ崩したくないと考えたのではないでしょうか。その結果がAメロBメロで採用された「4つ打ちっぽく聴こえるけど4つ打ちでないリズム」の正体なのではないでしょうか。 ここまでしてNeruさんが見せたかった明確な差異とは何なのか。答えはスネアです。この曲は「スコーン」という抜けの良いスネアの音が特徴的なのですが(気になる方は曲の最後を聴いてみてください、最後に鳴っている残響音はスネアによるものです)、これを強調する意図があったものと考えられます。通常4つ打ちリズムの場合は、スネアのタイミングをずらさない限りバスドラとスネアが同時に叩かれることになります。そのままいくとスネアと同じタイミングでバスドラが鳴ることで、スネアの音が埋もれてしまいかねない。これを避けたのではないでしょうか。またバスドラは音がとても低いので、イントロやサビで4拍打っているバスドラの数をAメロBメロで半分にすることで低音の主張が控えめになり、やや高音のスネアの音が相対的に強調できます。単純にイントロやサビでバスドラがズンズン鳴っているダンスビート然とした印象を変化させる狙いもあったとは思いますが、このスネアの強調が大きなポイントなのではないかと思います。 長くなってしまいましたが、「4つ打ちを選択するかどうか」というひとつを取り上げるだけでこれだけの作曲者の考えを推測することができます。身も蓋もない言い方をすればバスドラがあるかないかという些細な違いでしかありませんが、この差異に気付けた時、また差異を与えた目的について考えた時、自分はよりいっそうこの曲のことが好きになれました。好きな作品の新たな一面を見つけることでその作品がさらに光り輝いて見えてくる瞬間は、何にも代えがたい体験です。
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2023.08.03
レビュアー:め
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#ダンスロック
#鏡音リン
#長文レビュー